おおさき産業フェア

 おおさき産業フェアは、出展企業にとって新製品開発の目標となる存在で、技術者の皆さんの一年間の努力の成果を、来場される多くの方々に見て頂く重要な機会です。その努力によって積み重ねられた小さな成功体験が「新製品まであと一歩」という壁を破るための重要な経験となります。そこから誕生した「勝ち組」の一社に刺激され、次々と他の企業から新製品や高い技術が生まれてくるものと感じています。また「おおさき」の特徴的な地域性として、自社技術を惜しむことなく開示するといった人間性の良さを感じます。このことは技術の流出が懸念される一方で、「一緒に考えんべ」と課題を共有し、解決に繋げることもできます。

 今年で3年目となる、「Dr.ホッキ-賞」を通し、一社でも多くのおおさき地域のものづくり企業の花を咲かせる応援が出来ればと思います。おおさき産業フェアの開催を期待しています。

 

ロータリー CHUCK YOU ・ 測定用治具

大研工業株式会社

 

2016 大賞受賞
2015 大賞受賞

 一昨年は航空機用部品検査に用いる「測定用治具」、昨年は真空吸着ポータブルロータリーテーブル「ロータリー・チャック・ユー」で2年連続での栄誉に輝きました。「測定用治具」はジェットエンジンのタービンブレードの測定に使用します。複数本ある測定用のピンを同時に動かすことが可能で、大幅な時間短縮につながるのが特長。「タービンブレードはねじれた形状で、測定時にずれが出やすい」と開発者の猪股裕さん(35)は開発の苦労を話されました。治具の使用環境と同じ室温で検査して熱膨張の影響を排除するなど、正確な測定の実現のために細心の注意を払ったといいます。

 「ロータリー・チャック・ユー」は、非磁性金属の薄板を研磨する際、強力なバキュームで回転台に固定する装置。「真空固定と回転台はそれぞれ存在するが、両方を組み合せたものは、あるようでなかった。ボンドによる接着も手段の一つだが、手間がかかる上に空気が入って加工に支障をきたすこともあり、従来の悩みを解決する手法を生み出した」と製作した三嶋博之さん(37)は話します。

 2年連続のホッキー賞の受賞に「光栄です」と口を揃える2人から、より品質の高い製品の開発に向けた挑戦がこれからも続くと感じます。

超高精度嵌合切削加工技術

株式会社富士精密

2016 大賞受賞

 電子顕微鏡のレンズフード用部品を削り出す「超高精度嵌合切削加工技術」が評価され受賞。

 非常にデリケートな製品で、誤差を2ミクロン以内に抑える高い技術力が必要。素材の真ちゅうは柔らかく、加工しやすい反面ゆがみが出やすく、取引先の技能士からのアドバイスで加工前の段階で熱処理をするなどして、精密な加工を実現させました。「肝要なのは、2つの部品をねじ込み接続させる際、毎回同じ位置で締まるようにすることで、一昨年の夏ごろから製造を始めたが、最初は全部だめだった。最大で10ミクロンの誤差が出るなど、加工は困難を極めた。それでも、ものづくりのプロとしてのプライドが諦めることを許さなかった。」担当した製造部の菊田駿さんは話します。加工方法を工夫し原点に立ち返り、一つ一つの行程を見直していった結果、完成品は納品先から「期待以上の製品」と評価され、コストを抑えることにも成功しました。メインの半導体関連製品のほか、ステンレスやアルミ、樹脂などさまざまな材質を加工してきた同社の経験が生きたといいます。

 「最後まで諦めなかった結果、課題を解決できたことは会社にとって大きな財産となりました」と藤谷操代表取締役が受賞の喜びを語られました。

雄勝の濡れ盃

キョーユー株式会社

2015 大賞受賞

 東日本大震災で津波被害を受けた石巻市雄勝町で産出される雄勝石を素材として超精密加工技術を用いて冷酒用の平盃とぐい呑みにしたのが一昨年のホッキー賞を受賞した「雄勝の濡れ盃」です。受賞後は、昨年のG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議の歓迎レセプションで展示され、日本ギフト大賞2017の都道府県賞にも輝くなど脚光を浴びています。

 雄勝石は濡れることでより黒色が映え、一度濡れると乾きにくい性質を持つため、乾燥時と濡れたときの摩擦の差が少なく、一口目から同じ口当たりで飲めるため、酒器に向いています。一方で、雄勝石は割れ易く、機械加工が難しい難削材。それを一番薄い部分で平盃は2㍉弱、ぐい呑みは3㍉まで削ります。初めは割れや欠けを何度も繰り返したが、若手技術者を中心にこれまで手掛けてきた精密加工の経験を集結し完成させました。「商品という結果よりも、産学官連携で生み出したプロセスが大事」と話される畑中得實代表取締役社長は、堀切川教授のほか、行政や販売業者、MSOなどと協力し、被災地復興支援にも傾注しています。